PUBGの開発元が、非常に良く似たゲーム「荒野行動」を提訴しましたが、PUBGだってH1Z1のパクリじゃないかという方もいるのでその関係性についてみてみましょう。
PUBG開発元が「荒野行動」「ルールズオブサバイバル」のNetEaseを提訴するが著作権違反は無いと反論
世界で人気のバトルロイヤルゲーム「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS(PUBG)」の開発元であるPUBG Corp.が、競合のバトルロイヤルゲームの「荒野行動」を運営するNetEaseに対してゲームの類似性を巡って提訴したことが最近話題になりました。
両者の見解と、どのようなゲームなのかを見ていきましょう。
PUBGと荒野行動の類似性。PCで先にPUBGが発売、その後荒野行動がスマホ版をリリース
まずPUBGと荒野行動についての基本情報の比較ですが、
PUBGと荒野行動の比較 | ||
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PUBG | 荒野行動 | |
ゲームステージ | 無人島 | 無人島 |
プレイヤー数 | 100人 | 100人 |
スタート | 航空機からパラシュートで落下 | 航空機からパラシュートで落下 |
基本ルール | 最後の1人になるまで戦う | 最後の1人になるまで戦う |
マップギミック | 時間経過でエリア縮小 | 時間経過でエリア縮小 |
対応機種 | PC ※後にスマホ版も |
スマートフォン ※後にPC版も |
発売日 | 2017年3月(アーリーアクセス) | 2017年11月 |
ゲームの値段 | 約3,000円 | 基本プレイ無料アイテム課金 |
このようになります。
荒野行動は上記の表からもわかるとおり基本的にゲーム性がPUBGにそっくりですが、高いPCスペックを要求するPUBGに比べてスマートフォンで遊べる上、基本プレイは無料であるということもあって、PUBGテイストなスマートフォンアプリとして人気が上昇。全世界でユーザーが2億人を突破するという盛況ぶりを見せています。
時系列的に見てみると、PUBGがPC版をsteamでのダウンロード専売として発売、アーリーアクセス版が販売開始されたのが2017年3月24日のことです。そして、荒野行動は同年の2017年11月にリリースされていますから、一般的には荒野行動がPUBGのパクリゲームとして見られています。
両者ともTPSのバトルロイヤルゲームというゲーム性はもちろん、そのゲームルールや舞台、演出に至るまで非常に似通っていて、
引用元:dmm.com
例えばゲーム性だけでなく、ビジュアル面でも良く似ていたりします。
引用元:livedoor.com
ワイシャツにネクタイ、ヘルメットといった独特の風貌のゲームビジュアルは明らかにPUBGを意識しているというのは誰が見ても明白といえるでしょう。
PUBG Corp.が荒野行動運営のNetEaseを提訴したのは事実。荒野行動側も徹底抗戦の構えをみせている
今回の問題は海外メディアが「PUBG Corp.が、NetEaseが提供するサバイバルシューター『荒野行動』と『Rules of Survival』の配信差し止めを訴える訴状を、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提出した」と報じたところから広がりをみせました。
最初はデマではないかとの見方もありましたが、日本のファミ通Appが事実確認のため、直接PUBG Corp.に確認を取ったところ、
そこで、こちらの報道に関して事実関係を確認するため、ファミ通AppがPUBG Corp.に問い合わせをしたところ、「提訴したことは事実である」という確認が得られた。
また訴訟内容は、NetEaseの両タイトルは『PUBG』の著作権を侵害するものであり、これを根拠に配信差し止めと損害賠償請求を行うものであるという。
引用元:ファミ通App
提訴したことは事実という回答が得られたようです。
これに対して、荒野行動を運営するNetEase側は公式Twitterにて次のように表明しています。
いつも『荒野行動』をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
この度、訴訟の件に関しまして、多大なるご心配をおかけし、誠に申し訳ございません。
また、多くの応援メッセージをいただいており、感謝の念に堪えません。
今回の件に関しまして、弊社は以下の内容を明記させていただきます: pic.twitter.com/peNshomaSS
— 荒野行動-『KNIVES OUT』公式 (@GAME_KNIVES_OUT) 2018年4月8日
荒野行動のサービスが終了するのではないかなどの悪質なデマなどに対しては法的措置を検討するという姿勢で、PUBG Corp.からの提訴内容についても、
今回の件につきまして、NetEase(以下弊社)は著作権侵害の事実は一切無いものと考えております。競合社のあらゆる提訴に強く反論し、今後その正当性を裁判等で積極的に明らかにしてまいります。また、競合社から同様のバトルロイヤルゲームがリリースされる前のタイミングで、このように弊社に対して訴訟をおこされた動機に関して疑問を感じています。弊社はあらゆる非難、提訴に積極的に対応し、法律に則って正当な権利と利益を守ります。
引用元:appbank.net
このように回答しており、PUBGの著作権侵害をしたということは一切無いとしていて、徹底抗戦の構えを見せています。
この中で出てくる「競合社から同様のバトルロイヤルゲームがリリースされる」というのは、PUBGの正式なスマホ版のことを指していますが、今回の騒動もそれが大きな原因ではないかとされています。
引用元:4gamer.net
既にPUBGの中国でのパブリッシング権利を得た中国のIT企業テンセントがPUBGのスマホアプリである「PUBG:Exhilarating Battlefield」と「PUBG:Army Attack」を配信しています。
先ほどの時系列でもわかるとおり、PUBGは最初にPC版として登場しましたが、それをパクリ(模倣)したゲームがスマートフォン版で出てしまったことから、PUBG側は遅れを取ってしまった形になるわけです。
本家のPUBGが今後スマートフォンアプリで展開していく上で、類似ゲーム(PUBG側からみればパクリゲーム)が食い込んでくるのは避けたいというか好ましくないのでしょう。
上記の荒野行動(NetEase)側の反論でもそのことを指摘していて、自社の権利と利益を守るために争うとしており、両者の対立は決定的なものになっているのが現状のようです。
PUBGだってH1Z1のパクリゲームだというのは的外れ。バトルロイヤルゲームの起源を探るとMOD文化が見えてくる
ところで、洋ゲーをよくプレイしている人は「H1Z1」というゲームを知っている方もいらっしゃるはずです。
このゲームもバトルロイヤル形式をとっており、しかもPUBGよりも前に発売されていることから、PUBGがH1Z1をパクった!と主張する人もいます。ただしそれはまったく的外れな意見といえます。
この点を詳しく見ていくには、バトルロイヤルゲーム起源がどこにあるかを探っていく必要があります。
非常にわかりやすくまとめていたTweetがありましたので、まずはこちらを見てください。
「PUBGもH1Z1のパクリだ!」と言っている方が大勢いるので、バトルロワイヤルゲームの歴史をまとめました。荒野行動は何の関係もないコピーです。 pic.twitter.com/DV9U2ghL8s
— Napoan / ナポアン (@napoan) 2018年4月6日
いずれのバトルロイヤルゲームでもキーマンとなるのは、「PlayerUnknown」というハンドルネームで知られるブレンダン・グリーン(Brendan Greene)という人物。PUBGの「PlayerUnknown」というのもここから来ています。
下記ではさらに詳しくみていきましょう!
ARMA2のMODから始まるバトルロイヤルゲームの起源
そもそもPUBG誕生の根底にはMOD文化があるのですが、その点も交えて時系列順にみていきます。
MOD(モッド)は、PCゲームのデータ改造や追加を行うユーザー製のデータやファイルのことで、またそれらを適用したゲーム自体のことをいいます。
日本ではあまり馴染みの無いMOD文化ですが、MODを始点とした名作ゲームはたくさんあります。FPSゲームの代表格「Counter-Strike」などは有名ですね。
1.「ARMA2」のMODとして「DayZ」の誕生
ではPUBGの誕生のはじまりをみていきましょう。
「ARMA2」というゲームはチェコのゲーム製作会社Bohemia Interactive Studio社(通称BIS)によって開発された軍事シミュレーションFPSで、2009年5月29日に発売されました。
舞台となるのは旧ソ連領「Chernarus」という架空の国ですが、実際の地形や植生データを元にして構築された225平方kmにもなるとても広大なフィールドです。
そのフィールドで非常に優秀なAIがNPCを操作し、リアルな戦闘を楽しむことができる作品で、どちらかというとかなりコアなゲーマーがプレイしていました。
後に、そのARMA2の開発元、BIS社のマルチプレイモードデザインを担当していた社員の「Dean Hall」氏によって、個人プロジェクトとしてDayZというMODが作成されます。
DayZは後の作品に色々と影響を与えることになるゾンビサバイバルゲームで、この広大な空間の中で「体温」や「水分」、「血液」に「空腹」の要素などを管理しながらゾンビたちと戦い、ひたすらに生き抜くことを目的としたサバイバルゲームでした。
このMODが登場してからARMA IIの売り上げは5倍にもなったそうで、それだけ人気のMODだったのです。このDayZは後に独立したスタンドアロン版(単体のゲーム作品)として発売されることになります。
2.DayZにバトルロイヤルモードを追加するMODを「PlayerUnknown」氏が作成
人気のゾンビサバイバルアクションのDayZでしたが、これにバトルロイヤルモードを追加する「DayZ Battle Royale Mod」が登場します。つまり、ARMA2のMODのDayZのMODということになります。
このバトルロイヤルMODも非常に人気の高いMODとなりました。こうして新しいゲームへのアプローチが生まれるのが、MOD文化の素晴らしいところなのです。
そして、重要なのがこのDayZ Battle Royale Modを開発したのが他ならぬハンドルネーム「PlayerUnknown」氏、ブレンダン・グリーンその人だということです。
3.ARMA3が発売、バトルロイヤルMODとして「PlayerUnknown’s BattleRoyale」が登場
2013年になると、ゲームの元であるARMAの新作、「ARMA3」が発売されます。
それに合わせて、バトルロイヤルMODをPlayerUnknown氏が作成。このときから、MOD名に作者の名前が付いて、「PlayerUnknown’s BattleRoyale」(PUBR)となります。今のPUBGの名前に由来する部分があるわけですね。
上記動画はPUBRのプレイ動画なのですが、見ていただくとわかるとおり最初の輸送機から降下し、パラシュートで着地。そこからバトルロイヤルゲームがスタートするという今のPUBGの導入部とまったく一緒のシーンがあります。
もうこの時点で既に出ていたゲーム演出だったんですね。
4.SOEがH1Z1を発売。この対人特化モードでPUBGの原型が完成する
2015年には当時のSony Online Entertainment(現在はDaybreak Game Company)が「H1Z1」を発売します。
このH1Z1も、サバイバルジャンルゲームの始祖となったDayZに強く影響を受けたゲームで、本編はゾンビサバイバルアクションとなっています。
H1Z1は基本はゾンビサバイバルアクションでしたが、対人特化の「Battle Royale」モードが搭載されていて、これを監修したのが「PlayerUnknown」氏でした。
PlayerUnknown氏は、SOE社の「H1Z1」開発からのオファーを受けており、ライセンスを出す形で正式に実装されていました。
このH1Z1のバトルロイヤルモードから、3人称視点がメインとなり、エリアに毒の霧が発生することで徐々に活動できるマップが狭くなっていくギミックが搭載されました。
この時点で今のPUBGの原型がすべて形作られたといって良いでしょう。
5.韓国BlueholeがPlayerUnknown氏にオファーし、「PUBG」という新作が出来上がる
引用元:dmm.com
さていよいよ登場しますPUBG。PUBGの開発運営元はPUBG Corp.ですが、これは韓国を拠点とするゲーム開発スタジオである「Bluehole」の子会社です。
Blueholeは2007年に創設されたゲーム開発スタジオで、代表作にMMORPGの「TERA」があります。
Blueholeでバイスプレジデントとエグゼクティブプロデューサーを担当しているChanghan Kim氏は、バトルロイヤル形式のサバイバルゲームをずっと作りたいと思っていたそうで、当時はまだModderであった「PLAYERUNKNOWN」氏に新作バトルロイヤルゲームの監督として招き、協力してゲームを作成しようと持ちかています。
私は調査を行い、このバトルロワイヤルを手がけたPLAYERUNKNOWNという名のModderを見つけ、連絡を取って意気投合すると、『PUBG』のプロジェクトを立ち上げました。
引用元:gamespark.jp
PLAYERUNKNOWNこと「Brendan Greene」氏もこの要請を引き受けて、新作バトルロイヤルのゲームタイトル開発が始まります。
そして2016年にアルファ版が完成、2017年に正式リリースしたのが、PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS、「PUBG」です。
DayZ mod時代から続く、PUBR/H1Z1/PUBGは正当な系譜
こうやって見ていくと、PUBGがARMA2のMODのDayZのMODからの流れを汲んでいるのがわかります。そこに携わっていたのは他ならぬPLAYERUNKNOWNこと「Brendan Greene」氏であるわけです。
そしてPUBGが生まれた背景には、MOD文化があったということが大切なポイントです。
監修しているのが同じ人なのだから、H1Z1がPUBGに似ているのは当然ということで、それをもって「PUBGだってH1Z1のパクリでしょ」なんて言ってしまったら、自分が”にわか”だと公言しているようなものでしょう。
昨日までは内心「パクリだと思ってた」という人も大丈夫。これを読んで正しいPUBGの流れを掴んだら、まだ知らない人にドヤ顔で「え?PUBGがH1Z1のパクリ?またまたご冗談を」と余裕のドヤ顔で語りましょう。
荒野行動やフォートナイトはPUBGのパクリゲーム?マイクラの例もあって一概にパクリとも言い切れないのが悩ましい
さて、そうなるとMOD文化やその系譜でない「荒野行動」はやっぱりPUBGのパクリゲームということになってしまいます。
まあ率直に言ってしまえばリリースされた時期やゲーム内容といった部分も含めても、荒野行動がPUGBに強烈にインスパイアされて作られているのは素人目に見ても感じるところです。
どこまでがインスパイアで、どこからがパクリ?バトルロイヤル形式ゲームはフォートナイトなども有名
しかしどこまでをパクリゲームと言って良い物なのかは正直難しいところでもあります。
例えばUnreal Engineで有名な「Epic Games」が「Fortnite」(フォートナイト)というゲームを2018年3月に発売しました。基本プレイ無料で遊べる本作ですが、対人モードであるフォートナイトバトルロイヤルはやはりPUBGに良く似たものになっています。
フォートナイトは建築要素やカートゥーン風のグラフィックを採用しており、まだ独自性が高いように思えます。(オーバーウォッチに似ている気もするが)
ただ、そのフォートナイトバトルロイヤルのときも、PUBGデベロッパーのBlueholeが声明を発表して、両作の類似性などに対する懸念を発したことがありました。
やはりバトルロイヤル形式にするとどうしてもPUBGと似通ってしまう部分があるのと同時に、それだけPUBGのゲーム性が完成されたものであるかがわかります。
長い期間をかけてMOD時代から磨き上げられてきたゲーム性はさすがのものといったところでしょうか。
これはマインクラフト発表以降のボクセル単位の建築要素を含むゲームなどにもいえることですが、素晴らしい仕組みやシステムができると、それを模倣、感化された派生系が次々出てくるのはある意味自然なことともいえます。
しかしゲーム開発もビジネスなわけで、これだけ大人気になってしまうとパクられた側の損失は計り知れない部分がありますよね。
今回はPUBG Corp.が配信差し止めを求めて荒野行動のNetEaseを提訴する流れとなってしまいましたが、この落とし所がどこになるのかは、いちゲーマーとして非常に興味深いところです。
何だかTwitterなどではそれぞれのユーザーが対立して論争を繰り広げているところもあるようですが、こういう事態になったらあとは開発会社同士での話合いになるので、我々ユーザー側は事の推移を静かに見守るのが良さそうです。
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